開催概要
・特別講演「画像で創薬を変える」
創薬において、薬剤(化合物)の作用機序をシステマティックに解明する手法の開発は、薬剤の直接標的に焦点を当てた従来の研究戦略だけでは非常に困難である。この薬剤の作用機序を、薬剤の作用に連動して生起する細胞内のタンパク質ネットワーク変化をベースに推定し実験的に検証するアプローチは、薬剤が引き起こす幅広い細胞応答を効率的に抽出し、創薬・細胞医薬を加速できるだけでなく、薬効を活性化する併用薬の開発にも威力を発揮すると思われる。
本発表では、新規フェロトーシス誘導剤の作用機序を解明するために、我々が独自に開発した「Protein Localization and Modification-based Covariation Network (PLOM-CON)」解析法(共変動ネットワーク解析法)を適用し、新規薬剤の細胞内標的分子の同定、薬効の制御メカニスムをタンパク質の共変動ネットワークから推定し、実験的に検証した例を示す。
さらに、薬剤が引き起こす多面的な細胞応答を一挙に捉えるネットワーク解析法の利点を活かし、公共のタンパク間相互作用データベースBioGridを用いてネットワーク拡張を行うことでより網羅性の高い併用薬候補分子の探索・同定を実施した結果などをもとに、PLOM-CON解析法を活用した新しい創薬戦略を紹介する。
・FRONTEO講演「仮説生成に特化したAI創薬研究支援ソリューション」
疾患との関連性が未報告な標的分子を創薬研究者が発見することが現在、極めて難しくなっている。FRONTEO Drug Discovery AI Factoryでは、大手製薬企業や国際的研究機関で培った豊富な創薬経験とAIに対する深い理解を併せ持つバイオロジストが自社開発の自然言語処理AIを活用し、独自の解析手法を用いることで新規性の高い標的遺伝子や新たな適応症とその仮説生成を短期間に複数提案することが可能となった。
本講演ではAIとバイオロジストの融合による、創薬研究の大幅な効率化・加速化・成功確率向上への支援について紹介する。
開催日時
2025年4月23日(水) 11:00~12:00
登壇者

東京科学大学 総合研究院
特任教授
村田 昌之
1988年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了博士(理学)。 1989年京都大学大学院理学研究科生物物理学教室量子生物学講座助手。その間、1993〜1995年ドイツ・ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)、米国・カリフォルニア大学バークレー校に客員研究員として留学。1996年岡崎国立共同研究機構生理学研究所助教授。2003年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系教授。その間、東大・(株)ニコン社会連携講座「次世代イメージング画像解析学講座」特任教授兼任。東京工業大学科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター特任教授兼任。2021年東京大学定年退職(東京大学名誉教授)。2021年より東京工業大学(現東京科学大学)科学技術創成研究院(現総合研究院)特任教授。2022年より東京工業大学(現東京科学大学)マルチモーダル細胞解析協働研究拠点拠点長(2022年10月~2025年3月)。東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(IRCN)特任教授兼任。自治医科大学客員教授兼任。

株式会社FRONTEO
取締役 / CTO 博士(理学)
豊柴 博義
理学博士(数学)。2000年よりアメリカ国立環境健康科学研究所(NIEHS)において、データ解析による発がんプロセスの研究などに参加。2006年に武田薬品工業に入社し、バイオインフォマティクス分野の研究員、グローバルデータサイエンス研究所・日本サイトバイオインフォマティクスヘッド、サイエンスフェローを歴任。2017年よりFRONTEOに入社し、ライフサイエンスの領域に特化したAIアルゴリズムを開発。現在までに論文探索、創薬支援、認知症診断支援、転倒予測などのさまざまなAIソリューションをこのアルゴリズムをベースに製品化している。 2019年よりライフサイエンスAI CTO、2024年より取締役に就任。
備考
- 開催形式:オンライン(Zoom Webinars)
- 参加条件:フリーアドレスをご利用の方・当社の同業者の方、ご所属先が不明な方のお申し込み等はお断りさせていただくケースがございます。当日Zoomにアクセスする際にはお申し込み時に記載した氏名・メールアドレスをZoom参加入力欄へ記載をお願いいたします。